堺市長選挙(2017年)の候補者、争点、マニフェストを徹底比較!(その2)

前回記事に引き続き、本稿では竹山修身候補と永藤英機候補の選挙公約(マニフェスト)を比較、紹介し、編集部独自の解説を加えた記事をお送りします。

 

 

■竹山修身(たけやま・おさみ)のマニフェスト

 

http://www.sakai-hitotsu.jp/pdf/takeyama_manifesto20170902.pdf

キャッチコピーは「堺はひとつ! 大きく動く! 笑顔日本一!」
マニフェストのトップには「「自由」と「自治」は堺の原点(しるし)!」と銘打たれ、堺市を廃止・分割する「大阪都構想」には反対する旨を打ち出しています。
政策面では「堺を愛するひとづくり」「個性が輝くまちづくり」「堺を支えるしごとづくり」を3本柱としています。

目玉政策と思われるものに

「2人目以降の子どもの保育料の完全無償化」

「子どもの医療費助成を高3まで拡充」

「無料の放課後学習を拡充」

「大学奨学金の返済支援制度」

「がん検診の無償化」

「おでかけ応援バスの利用制限なし」

「水道料金の値下げ」

「堺東駅前の再開発」

「泉北ニュータウンの再生」

「大阪モノレールの延伸」

「大型スポーツ施設の整備」

「百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録」

「市長報酬をこれまでの20%に加えさらに30%カット(合計50%カット)」

などがあります。
これまでの竹山市長の実績を基に、様々な政策を拡充していく内容が主となっています。

 

■永藤英機(ながふじ・ひでき)のマニフェスト

http://oneosaka.jp/sakai_election2017/img/manifesto.pdf

キャッチコピーは「停滞か、成長か」
1ページ目に「堺には歴史、伝統、文化、産業、祭りなど、大阪市にもない魅力にあふれて」いるが、「今の行政体制のまま」ではダメで、「古い行政を徹底的に見直す」と記載されています。
政策面では「堺・成長戦略」「全ての世代へのサポート」「古い行政の刷新」を3つの柱と掲げ、7つの分野に渡って政策が並べられています。

目玉政策と思われるのは

「幼児教育の無償化」

「中学生への塾代クーポン」

「中学校給食を全員に」

「がん検診の無償化」

「おでかけ応援バスの利用制限なし」

「水道料金の値下げ」

「公共施設や市営公園の民間活用」

「LRT、BRT、モノレール、地下鉄の計画」

「水上飛行機の導入」

「泉北ニュータウンへのホテル誘致」

「利晶の杜、市民会館、百舌鳥・古市古墳群ガイダンス施設の再検討」

「市長報酬の30%カット」

など。
公共サービスの民間開放などを改革と称する項目が目立ち、維新らしい内容となっています。
自らが立候補した平成27年の統一地方選挙で大々的に打ち出していた「大阪都構想」については今回一切触れられていません。

 

■マニフェストの比較解説

両者のマニフェストにはそれぞれ特徴がありますが、項目だけ見ると似通っているものも複数あります。その中からいくつか抜粋し解説しておきます。

 

<子育て支援>

まず子育て支援ですが、竹山市長は「2人目以降の子どもの保育料の完全無償化」、永藤元府議は「幼児教育の無償化」を公約しています。これらの違いはなんでしょうか?

大きな違いは3点。
竹山案は「第2子以降全員」「0歳から5歳まで全年齢」を対象とし、「保育料と教育料の両方を無償化するもの」です。
永藤案が大阪市の制度に倣ったものだとすると「4、5歳のすべての子ども」を対象に、「教育費部分のみ無償化(保育料は必要)」という内容です。

この制度内容の違いについて、竹山候補は「専門機関の調査研究結果から3人目の子どもを産みたくても経済的理由から産めない方が多いと判明していることから検討し、出生率の向上にも効果的につながる制度設計である」と理由を説明しています。
永藤候補は大阪市で先例のある「幼児教育無償化を堺にも導入」とアピールしています。

なお、必要な財源は厳密には比較はできませんが、両案ともにだいたい二十数億円で同程度だそうです。

 

<教育>

「中学生の塾代・習い事クーポン(永藤案)」と「小学校の無料の放課後学習(竹山案)」についても似ているようで発想が異なります。簡単に言うと永藤案は「できる子を伸ばす」、竹山案は「全体の底上げを図る」という発想の違いがあります。

永藤案は「教育にも民間の力を導入し、塾や習い事に行くことを支援」するものです。元にしたと考えられる大阪市の「塾代助成事業」は、「塾・各種教室等にかかる費用を月額1万円を上限に助成」する内容で、一定の所得制限があり市内中学生の約半数が対象です。

竹山案は「全国学力テストなどの成績(順位)を上げるには、塾に行くような上位の子どもたちへの助成ではなく、なかなか自宅では勉強ができない環境にある子どもたちに無償で学習の機会を設けることが重要」という考えに基づきます。公教育の役割としては、全体の底上げのほうが意義があるでしょう。

また中学校給食に関してですが、竹山候補は前回マニフェストで選択制の中学校給食導入をすでに実現しました。永藤候補は今回、中学校の全員給食実施を挙げていますが、堺市の自治体規模での全員給食となると、かなり大きな事業で財源が課題となるでしょう。

 

<水道料金>

「水道料金の値下げ」については、両候補予定者とも公約に掲げており、竹山候補は「経営の効率化」、永藤候補は「新たな仕組みによる様々な手法」で値下げを公約しています。
よく比較される大阪市の水道料金が他の市町村より安いのは、淀川という水源が市内にあり、かつ自前の浄水場を持っているからです。堺市を始め大阪広域水道企業団から水を買っている自治体とは、いわば製造原価と小売価格のような差が出るのは当然で、この差を埋めるにはとてつもなく高いハードルがあります。
水道料金をどう下げるのか両者の手腕に期待がかかります。

ところで、下水道料金については、すでに竹山市政の下で、今年(平成29年)10月から50円値下げされることが決定していますが、これは全国政令市初のことであり、不断の経営改革と健全経営に取り組んできた堺市上下水道局の大きな成果です。

 

<百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録の取り組み>

「百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録」については両者とも推進の立場であると思われますが、関連整備において決定的な違いがあります。

永藤候補は「百舌鳥・古市古墳群」の価値を説明するガイダンス施設を見直すと明言しています。
この施設は旧・府立大阪女子大学跡地に建設が決定しているもので、百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録の推薦書にも明記されています。これを見直すということは、国内推薦までこぎつけた世界遺産登録を見直すと言ってることに等しく、世界遺産登録の取り組みを後退させることにつながる恐れがあります。

ちなみにこの事業に関しては、堺市議会の維新会派も議案に賛成していますし、用地の売却や推薦書の決定にも大阪府知事である松井一郎氏は当然のことながら同意しております。公認する党の代表の政策と、公約との一貫性、整合性の欠如に対しても、永藤候補は説明する責任があるでしょう。

 

<泉北ニュータウン再生>

まちびらき50年を迎えた泉北ニュータウンは、町の再整備が待ったなしです。
永藤案では近畿大学医学部・附属病院の移転にあわせたホテルの誘致などのエリア改革、竹山案では原山公園のリニューアルと各駅周辺施設の再配置が柱となっています。
近畿大学医学部の移転は平成35年の予定。原山公園はすでに事業者が決定し32年のオープンを目指して事業が進められています。

 

<がん検診無償化>

「がん検診の無償化」についてはほぼ同内容と思われます。「がん検診の受診支援の拡充」は竹山市政でこれまでコツコツと進めてきた政策の成果として、今回の無償化に至ったものです。市民にとっては大変よろこばしい政策ですので、早く実現してほしいですね。

<身を切る改革>

いわゆる「身を切る改革」は竹山候補が市長給与50%カット永藤候補は30%カットです。退職金は、竹山市長は今任期ですでにもらっていませんし、永藤候補も廃止を打ち出しています。
下げれば良いというものでもないと思いますが、全国的にこの流れは止まらないことでしょう。

 

■総評

現職でもあり元・行政出身の竹山候補のマニフェストはしっかりとした制度設計と財源に裏打ちされており手堅い印象があります。
一方の永藤候補は、抽象的な表現もありますが、モノレールの新線や水上飛行機など、新人らしくどーんとビッグな夢のあるイメージです。
皆さんの補者選びに、本稿が参考になることを期待します。

 

 

前回記事 堺市長選挙(2017年)の候補者、争点、マニフェストを徹底比較!(その1)
http://itasuke.jp/column/itasuke_editor/manifesto_hikaku1